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島先生の発酵よもやま話 第4回 納豆は世界に広がる

島 純

龍谷大学農学部植物生命科学科教授、博士(農学)

島先生の発酵よもやま話 第4回 納豆は世界に広がる

島 純

龍谷大学農学部植物生命科学科教授、博士(農学)

微生物との「出会い」

目に見えないほど小さい生物(微生物)によってつくられる発酵食品には、その誕生に関するいろいろなエピソードがあります。それらの多くは、発酵食品のもとになる食材と微生物との「出会い」を私たちに教えてくれています。

日本の納豆の発祥

関西でも消費が急激に伸びている発酵食品に納豆があります。納豆のうち、ネバネバを含むタイプの納豆を糸引き納豆とよびます。納豆の発祥に関して有名なエピソードは、八幡太郎義家にまつわる話です。戦の最中に食料や飼料が不足したため、義家が農民たちに大豆の提供をお願いしたそうです。慌てた農民たちは、温かいまま煮豆を稲のたわらに詰めて提供しました。数日たってみると、煮豆は糸を引いて納豆に変わっていました。このように誕生した納豆が美味しかったため、日本全体に広がっていったと言われています。
このエピソードは、稲わらに付いていた納豆菌が煮た大豆と出会い、温かであったため発酵が進んだことを示しているのです。微生物の存在が知られていなかった時代にも関わらず、発酵の様子を上手に記述されていて感心しますね。

類似した発酵食品

世界に目を向けてみると、納豆に類似した発酵食品がインドネシアやヒマラヤ地域などに存在しています。
インドネシアの納豆は、テンペとよばれます。大豆を発酵させることでは日本の納豆と類似していますが、テンペを作るのは納豆菌ではなくてカビです。
ヒマラヤ地域の納豆は、乾燥させて料理の調味料として使います。どの地域で最初に納豆が作られたのかわかりませんが、納豆は世界に広がっている発酵食品なのです。それぞれの地域で、納豆の誕生のエピソードが伝わっているのではと想像しています。

なぜ、納豆は世界で食べられるのでしょうか。まず、栄養的に優れていることがあります。発酵の過程でビタミンや血栓溶解を促す成分が作られることが明らかになっています。もう一つの理由は美味しさにあると思われますが、感じ方は人それぞれですね。

[ひと口メモ]納豆菌は耐久性が高く、〝最強〟!
納豆菌は芽胞(がほう)と呼ばれる耐久性の高い特殊な殻を作ります。乾燥や熱にも強く、-100℃~ 100℃の環境にも耐えるので〝最強〟と言われます。
このため他の菌を扱う作業場(酒、パン、味噌、醤油など)には納豆菌を持ち込まないという話も。

出典:「島純の発酵食」『滋賀民報』