ヨーグルト、チーズ、発酵バターなどが発酵乳に含まれる食品です。日持ちする保存食として、あるいは美味しいご馳走として、世界中で発酵乳は食べられています。
牛、羊、山羊などから頂いた乳を利用して、主に「乳酸菌」とよばれる微生物のはたらきでつくられるのが発酵乳です。乳酸菌は、腸の中で私たちの健康を助けてくれる力を持っています。そのため、現代では乳酸菌を含む健康食品やサプリメントが数多く開発されています。これらは、プロバイオティクスとよばれます。
発酵乳は、最も長い歴史をもった発酵食品です。ブルガリアには紀元前400 0年頃のヨーグルト製造の記録が残されています。また、インドやトルコにも古来のヨーグルト製造の記録があります。一方、紀元前4000年頃の古代エジプトの壁画にはチーズの製造法が描かれていました。その頃には商業的なチーズ製造が行われていたことがわかります。ヨーロッパなどではバターを作る前に、あらかじめ乳酸菌で発酵させる発酵バターが主に使われていますが、起源は不明です。
このように発酵乳の起源にはわからないことがまだ多いのですが、人類の牧畜開始後、ほどなくして発酵乳も作られるようになったと考えてよいでしょう。
乳の発酵による食品にはカタカナの名前が付いていることから、発酵乳はもっぱらヨーロッパなどの海外で作られていたようなイメージを持ちますね。しかし、日本でも、奈良時代の書物に動物の乳から発酵食品が作られていた記録があります。
ヨーグルトのような食品は「酪(らく)」、チーズのような食品は「蘇(そ)」と呼ばれていました。さらに、酪や蘇を熟成して濃縮させた食品が「醍醐(だいご)」とされています。現在でもよく使われる「醍醐味」という言葉の起源になった食品です。
醍醐がどのような食品であったのか諸説存在していますが、乳から作られる最高に美味しい食品とされています。さぞかし、美味しいものだったのでしょうね。
出典:「島純の発酵食」『滋賀民報』