日本は「漬け物天国」と言われることがあります。多種多様な漬け物が全国で作られているからです。四季に恵まれ東西南北で気候が異なる日本では、変化にとんだ食材がさまざまな方法で漬け物にされています。滋賀県では日野菜漬けや菜の花漬けなど、独自の漬け物がありますね。
漬け物のつくり方を2つに分けると、微生物がかかわる発酵漬け物と微生物がかかわらない無発酵漬け物になります。
代表的な発酵漬け物は、ぬか漬けや塩漬けなどです。無発酵漬け物としては、浅漬けや梅干しなどがあげられます。どちらの漬け物もとても美味しいのですが、発酵漬け物には微生物の力がプラスされているのです。今回は、ぬか漬けに必要なぬか味噌について見ていきましょう。
玄米を削って白米にする時にできてくるのがぬかです。ぬかには、ビタミン、ミネラル、食物繊維など栄養が豊富に含まれています。これを捨てる手はありませんね。そこで、ぬかに塩や水を加えてぬか味噌として利用したのです。
ぬかに含まれる成分は微生物の栄養にもなりますので、ぬか味噌には驚くほどたくさんの微生物が住み着いています。その数は指先ほどのぬか味噌に数億個以上。まるで、ぬか味噌そのものが生き物のように思えますね。微生物の中でも、人間にとって良い成分を作る乳酸菌や酵母が大半を占めています。
状態の良いぬか味噌を管理するには、毎日かき回すことが必要と言われています。これは乳酸菌や酵母が過ごし易いように、適度に空気を入れるためなのです。
ぬか味噌に野菜を漬けると微生物が作った成分が野菜に染み込み、さわやかな風味になります。さらに素晴らしいことに、ぬか味噌に含まれていた栄養成分が野菜に移っていきます。
さらに微生物が作ったビタミンやアミノ酸も野菜に加えられるのです。白米や汁物で不足しがちな栄養分をぬか漬けが補っていました。このように、ぬか味噌は工夫がつまった優れた発酵技術といえるのです。
[ひと口メモ]お漬物のひみつ
野菜の細胞は、水が外に出て塩が中に入ると死んでしまいます(塩殺し)。すると細胞内の酵素が細胞の成分を分解。野菜の青臭さを消し、乳酸菌なども働き、漬物特有の風味や個性が生まれます。
出典:「島純の発酵食」『滋賀民報』