お酒の種類と同じ数のお酢が世界にあると言われています。なぜなら、お酒に含まれるアルコールが変化してお酢になるからです。
世界には多種多様なお酒がありますから、それらをお酢に変化させれば同じ数のお酢が生まれるという理屈になります。アルコールをお酢に変えるはたらきをしてくれるのは、酢酸菌とよばれる微生物で、お酢は発酵食品の仲間なのです。
お米に含まれるでんぷんを使ってつくられるお酒が日本酒です。その日本酒に含まれているアルコールを変化させると米酢になります。お寿司や酢の物によく使われるお酢ですね。日本では、麦やとうもろこしなどの穀物から作られる穀物酢も多く使われています。
世界に目を向けてみましょう。お酢はビネガーともよばれますが、ワインから作られるお酢がワインビネガー、ビールから作られるお酢がモルトビネガーというように、多くの種類のお酢が世界でつくられています。
なぜ、世界中でお酢がつくられ調味料として利用されているのでしょうか。酸っぱさが料理を魅力的にして、食欲を引き出してくれることが大きな理由だと思います。食材の中には、生臭みや塩辛さが強いものもありますが、お酢はそのような食材の性質を隠すような力があるのです。
お酢の魅力として防腐予防があげられます。お酢の成分は酢酸という物質なのですが、この成分には他の微生物が増えることを防ぐ力があります。食品を保存しておく場合に、お酢を加えておくと、食品を腐らせるような微生物が増えるのを遅らせてくれます。魚介類を酢漬けにすると日持ちが良くなることが典型的な例です。
さらに、お酢は身体によいこともわかってきています。科学的に全てが明らかになっているわけではありませんが、疲れをやわらげることや高血圧の予防効果などがあるとされています。このようなことから、お酢は調味料にとどまらず、健康的な飲み物と考えられるようにもなってきています。
お酢は紀元前5000年頃にはすでに製造が始まっていた記録が残されています。その頃の人々は、お酢の防腐予防効果や健康によいことに気付いていたのかもしれませんね。
出典:「島純の発酵食」『滋賀民報』