「豆の加工食品」と聞いて、何が思い浮かぶでしょうか。多くの方は、豆腐・納豆・味噌など、大豆製品が浮かんだのではないかと想像します。私たちが日頃、何気無く食べている「豆の加工食品」は大豆製品が大半を占めています。そこで私は、大豆以外の豆でも加工食品が作れないか?と研究に励んでいます。

豆で人々の健康をつくる

そもそも、豆は人の健康にどのように良いのでしょうか。豆は穀類の中でもたんぱく質を多く含みます。また、不足しがちな食物繊維・ビタミン・ミネラルも豊富に含んでいます。さらに、脂質含量は少なく、エネルギー摂取過多を防ぐことができます1)。これらのことから、動物性食品の摂取量が増加している現代において、豆は私たちの健康維持・増進に役立つ食品素材であると言えます。

豆で食糧問題に立ち向かう

豆は健康に良いだけでなく、食糧問題を解決する一助になる可能性も秘めています。世界人口の増加に伴い、たんぱく質源が不足するという食糧問題が深刻さを増しています。現在、たんぱく質の供給源のほとんどは家畜肉(牛や豚)によって担われていますが、これ以上の家畜肉を増やすには、大量の水・広大な土地が必要となります。また、温室効果ガス発生の観点からも、環境への負荷が大きくかかってしまいます。そこで解決策として、代替たんぱく質の開発が進んでいます2)。代替たんぱく質として「昆虫食」や「培養肉」といった言葉を耳にする機会も増えてきました。しかしながら、これらを食べることに抵抗がある方もいらっしゃるかと思います。そんな中、たんぱく質を豊富に含む豆は、私たちにとって食経験があり、種類も豊富です。豆をたんぱく質の供給源として利用することで、たんぱく質不足の回避に役立つと期待できます。

これまでに私は、ナタマメに着目し、最適な加工方法・加工特性を調べてきました3)。ナタマメから、筋肉量の維持・増進に有用なロイシンを豊富に含むタンパク質4)と、嚥下困難者用の食事への利用が期待できるゲル化物質5)が抽出されることを明らかにしています。今後も、ナタマメを含めた豆の加工食品の開発を目指します。

 

参考
1)  公益財団法人 日本豆類協会
2)  CB Insights Research. “Our Meatless Future: How The $1.8T Global Meat Market Gets Disrupted”. Research briefs. 2019-11-13.
3)  Nishizawa K., Masuda T., Takenaka Y., Masui H., Tani F. and Arii Y. (2016). Biosci. Biotechnol. Biochem., 80, 1623-1631.
4)  Nishizawa K. and Arii Y. (2016). Biosci. Biotechnol. Biochem., 80, 2459-2466.
5)  Nishizawa K. and Arii Y. (2017). Biosci. Biotechnol. Biochem., 82, 120-126.