みなさんは「カブ」というと、どんな大きさ、色、カタチを思い浮かべますか?
おおまかには、小カブ、大カブ、白カブ、赤カブ、みんなが知ってる丸いカブのほかに、長細いカタチをした日野菜など多くの品種があり、日本各地で地の物が栽培されていたりします。
今回は、もぐらぼでも何度か取材でお世話になっているタキイ種苗さんから、大きさ、食感などが異なる品種6種類のかぶのタネをご提供いただいちゃいました。
ちなみにタキイ種苗は、1835(天保6)年創業、野菜や花のタネの研究開発・生産・販売をおこなう種苗メーカー。京都に本社があり、日本の種苗業界でトップを走る企業なのです。
今回はいただいた6品種のカブの栽培比べ&食べ比べに挑戦したいと思います!
わたしは、近所で畑を借り野菜を育てて12年。畑の名前は“しましま畑”です(だってほら、畑ってしましまじゃないですか)。野菜は、ほぼ自家消費。多品種を少量ずつ育ては食べています。
毎冬、カブも栽培していますが、これまで育てているのは1品種。タネ1袋には、メーカーや種類により100粒以上も入っているので、そう広くない畑では1種類で十分なのです。
今冬は、ご厚意でいただいた以下6品種を栽培していきます。
<タキイ種苗>
・早生大蕪
・京千舞
・小粋菜
・スワン
・福小町
・本紅赤丸蕪
まずは雑草を抜き、牛ふん(牛のフンを発酵させた有機肥料)をざざっと入れて(※めんどうくさいので量らない派)、クワで畝を整えて下準備が完了です。
赤カブの種は茶色なのですが……。
こちら「スワン」ほか、残り5種類の白カブの種は鮮やかなブルーでした。なんでやろ??
タキイ種苗 広報出版部・広報担当・荒木匡子さんによると、
「タネが青色なのは、『フィルムコート種子』のためです。殺菌剤や殺虫剤を加えた水溶性ポリマー溶液でタネをコーティングしているのですよ。土に播いた時にタネを識別しやすくなり、少量の薬剤で発芽時の病害を効果的に防ぐことができます」とのことでした。
なるほど、茶色のタネだと、土にまぎれて「あれ、どこまで播いたっけ」と、わかりにくくなることがあります。目立つ青色なのは、そんな理由があったのですね。さらに、病害を防ぐ成分でコーティングされているのは、無農薬栽培の畑にはありがたい限りです。
種まきしたのは10月5日。10日後、かわいい双葉が出てきました! ぎゅうぎゅうに詰まっているので、ここからしばらくは、芽を引っこ抜いて間隔をあけていきます。
種まきから1ヶ月後。
それでも、間隔がやや狭い。
このままでは1株あたりのスペースが狭く、カブが大きく育ちません。栄養の取り合いになるのも避けたい。
ということで、あいだを抜いて間隔をあけました。
抜いた間引き菜は柔らかかったので、ざくざく切って、味噌汁に入れて食べました。これもお楽しみのひとつ。
農薬を使っていないにもかかわらず、葉っぱに虫食いがありません。
種まき時期を、虫が活発な9月を避けて10月上旬にしたからかも。あと、こまめに間引きしたからかも。虫は、外敵に見つからないように狭い場所を好みます。そして、葉っぱが詰まっているじめじめした場所に、病原菌が発生しやすいです。ということで“しましま畑”では、病害虫を避けるため、葉のあいだをスカスカにしています。
年が明けて、1月2週目。種まきから約120日後です。
12月から、小さなカブをぼちぼち収穫して食べていたのですが、大きく育つまで待ちました。
葉っぱが黄色くなっているものもあります。種まき時に肥料をやったきりなので、120日の間で肥料切れしてしまったのかも知れません。追肥(ついひ:栽培期間中に肥料を足す)をすれば良かったのでしょうか。
6種類のカブを並べてみました。葉っぱが黄色くなったものもありますが、下段の葉っぱはきれいです。
「間引きの時点では葉がきれいだったのに、120日後にボロボロになったのは、タネを播いた時期が遅かったのが原因と考えられます。
今回は虫の害を避けるため、10月入ってからのタネ播きを選択されたと思います。適期栽培で9月中にタネを播く場合は、防虫ネットなどを活用すれば、害虫の被害を防ぐことができますよ。
ちなみに、小〜中カブは適期栽培すると60日前後、大カブでも適期栽培すると70日程度で収穫できます」。
食べ比べは、「薄切りの塩もみ」「くし切りの塩もみ」「煮物」の3種類でおこないました。
塩もみは、それぞれをビニール袋に入れて、ぱらっと塩をまぶし、重石を乗せて1日置きました。
煮物は、かつおと昆布のおだし、酒、みりん、薄口醤油で味付けしました。
カブの区別をつけるため、だしパックに入れ、それぞれに油性ペンで番号をつけました。
ちなみに、皮はむいていません。経験上、しましま畑で育てたカブは皮をむくと、皮つきでも気にならないほど柔らかくなります。身がほろほろと崩れるのを防ぐためでもあります。
赤カブは煮るとおだしが赤く染まるため、白カブとは別の鍋で煮込みました。
味付けは、白カブと同じです。
<早生大蕪>の特徴
肌は純白で美しい。
肉質は緻密で甘みに富み、繊維が少なくて歯切れがよい。
生食用としても千枚漬用としても、外観・品質・味ともに極上。
種まき後70日で根径12cm、根重1kg程度になり、さらに日を置けば2kg 以上に太る。
<感想>
種まき後120日で根径7cm、根重171g。
葉っぱはきれいですが、根(食べるところ)は、むちゃくちゃ小さいです。
塩もみはシャキシャキ食感、噛むほどにじんわりと甘みが口に広がります。
煮物は、箸で持ち上げるとほろりと崩れるほど柔らかです。
<京千舞>の特徴
肌は純白で美しい。
肉質は緻密で甘みに富み、繊維が少なくて歯切れがよい。
「早生大蕪」に比べ。腰高で厚みのある玉に仕上がる。
9月上旬まきの栽培では、種まき後70日で根径12cm、根重1kg程度になり、さらに日を置けば2kg 以上に太る。
<感想>
種まき後120日で根径8cm、根重226g。
こちらも、やはり小さいままでした。葉っぱはぴかぴか。
塩もみは、歯ごたえがしっかりめ。あっさりした味わいながら、やや滋味を感じます。
煮物は、こちらも箸で崩れるほろほろ加減に。口に入れると、歯を使わなくてもとろりと溶けていきます。皮つきなのに、このなめらかさはすごい!
<小粋菜>の特徴
ミズナのような葉をもつ、新しいタイプの小中カブ。
一般的なカブより葉軸が細く、葉数が多い。
ミズナ葉のシャキシャキとした食感と歯切れのよいカブの緻密な肉質が特長。浅漬や鍋の具、油揚げとの煮びたし、炒めもの、若葉のサラダなど幅広い用途でおいしい。
小カブ栽培では根径6cm程度、中カブ栽培では根径8〜10cm程度が目安。栽植密度によって葉数と根の肥大性が変わり、好みのサイズで栽培可能。
<感想>
種まき後120日で根径5cm、根重69g。
ミズナのような葉が特徴なのですが、けっこうボロボロになってしまいました。塩もみは、塩が少なめだったためかシャクシャク食感が楽しめました。煮物は、ふんわりふっくら食感。しっかり甘みもありました。
<スワン>の特徴
小カブから中大カブまで、随時どりができる。
小カブとしても形質がすぐれ、本命の中大カブどりでは、厚みのある扁円の根形で尻づまりがよく、ス入りも遅い。
肉質はやわらかく甘みがあり、漬物のほか、サラダ用に通用する良質性が最大の特長。
中大カブどりでは直径12cm程度を最大限とする。
<感想>
種まき後120日で根径6cm、根重92g。
白いから白鳥→スワン、というネーミングなのですね。とはいえ、根の上部がピンク色。塩もみにすると。ピンクがアクセント色になり、なぜかお得な気分になりました。塩もみは、最初はカブの滋味が感じられたのですが、噛むほどに甘みが出てきました。煮物は、なめらかな食感が絶妙で甘さもしっかり楽しめました。
<福小町>の特徴
葉は濃緑、球は豊円形でよく揃う。
肌は純白でツヤがあり、肉質は緻密でやわらかく、甘みがあって生食にも適する。
<感想>
種まき後120日で根径5cm、根重66g。
育てた中で、一番小さくなってしまいました。塩もみでも煮物でも、小さな根に、カブの旨みが凝縮されていました。煮物では、皮も内側もとろける柔らかさを楽しめました。
<本紅赤丸蕪>の特徴
根部の表皮は美しい鮮紅色で、根径10cm程度の扁円球をした中カブ。
葉柄や葉脈も先まで濃紅色。
家庭菜園用としても作りやすく、肉質は緻密で甘みが強く、煮食、酢漬、塩漬に最適。
<感想>
種まき後120日で根径7.5cm、根重178g。
塩もみも爽やかで良いですが、煮物はホームページでも「煮食に最適」と紹介されていただけあって、かなりおすすめです。カブならではの甘みに、赤カブ独特の滋味がプラスされて、むちゃくちゃおいしいです。リピ調理決定です!
余った葉は、まとめて茹でておひたしにしました。
*黄色い葉は、畑に捨てました
さっと茹でてシャキシャキに仕上げました。みずみずしさと、クセの少ない味わいで、サブおかずにもお弁当にもぴったりでした。
赤カブは、大根とツナとナッツと合わせてサラダにしました。大根だけよりも、柔らかな甘さが出ました。食卓に赤があると華やかになるのも嬉しいポイントです。
以上、今回は6種類のカブを栽培してみましたが、目指していたより小さかったのは、間引きの時期が遅れたからか、肥料追加をしていなかったからか、もしくはその両方だと思われます。
スーパーマーケットで販売されているカブは、肌もツヤも美しく、そして大きいので、本気農家さんは、さすがプロなのだなと実感しました。
見た目を美しく育てることはできませんでしたが、タキイ種苗のカブは本っ当に美味しかった!
「おいしいと言って頂けて嬉しいです。『スワン』や『小粋菜』は春栽培も可能なので、挑戦してほしいですね。春も冬もうまく栽培するコツは、タネを播く時期です。タネの袋の裏面に作型表が載っていますので、ぜひ参考にしてみてください。違う品種のカブを栽培して、家庭菜園だから味わえる採りたての新鮮な食感、味の違いを楽しんでみてほしいです」。
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これまで12年もカブを栽培してきましたが、タネ播き時期が一番重要というのは、実は初めて知りました。
カブは種まきから収穫まで2カ月程度と手軽で、家庭菜園にも最適な野菜です。みなさんも、是非挑戦してみてください。