毎月19日は「シュークリームの日」。記念日を制定したのは、スーパーマーケットやコンビニで販売されているシュークリームを製造する株式会社モンテールです。19日とした理由は、19(ジューク)が、シュークリームの「シューク」と語感が似ているためだそうです。
シュークリームは、フランス語でシュークリームを指す「シュー・ア・ラ・クレーム」の「シュー」と、英語の「クリーム」を合わせた和製英語です。英語でシュークリームは「クリーム・パフ」といいます。そのため、英語圏で「シュークリーム」と言っても伝わりません。英語圏で「シュークリーム」というと、「靴(shoe/シュー)クリーム」と誤解されることがあるようです。
フランス語の「シュー・ア・ラ・クレーム」の「シュー」はキャベツという意味です。その理由は、シュー生地の見た目がキャベツに似ているからなのだとか。手の平に乗るほどのサイズ、しかもお菓子なのに、キャベツという名前がつけられているのはおもしろいですね。
シュー生地の原材料は、小麦粉、バター、卵、水と、いたってシンプル。作り方は、鍋にバターと水を入れて温め、小麦粉と卵を入れて生地を作り、オーブンで焼いて水蒸気の力でふくらませます。シュー生地を冷ましたら、底に穴を開けるか上部を切ってカスタードクリームなどを詰めてできあがり。作業工程もたくさんありますし、材料の混ぜ方や温度など細かいポイントがいくつもあります。シュークリームはスーパーマーケットやコンビニなどで手軽に買えますが、なかなか手間がかかるスイーツなのです。
シュークリームが誕生したきっかけは、16世紀中ごろにさかのぼります。イタリアの王女がフランスの王子と結婚したとき、自国から菓子職人を連れていきました。その職人がフランスにシュー生地を持ちこんだとされています。のちにフランスで改良が進み、シュー生地を膨らませ、穴をあけてクリームが詰められるようになりました。
日本にシュークリームが伝わったのは、幕末のことです。フランスの菓子職人、サミュエル・ピエールが横浜に洋菓子店を開き、シュークリームを販売していたといわれています。日本人の洋菓子店では、「村上開新堂」や、現在の東京凮月堂(ふうげつどう)の前身にあたる「米津凮月堂」がシュークリームを製造・販売していたという記録があります。
ちなみに「米津凮月堂」では明治42(1909)年、シュークリームは1個4銭で販売されていました。明治37年ごろ、うどん・そばは1杯2銭、あんパンが1個1銭だったので、シュークリームは現代よりも高価なものだったということになります。
明治・大正期に活躍した小説家・ジャーナリストの村井弦斎(げんさい)による小説「食道楽」には、シュークリームが何度も登場します。明治38(1905)年ごろには弦斎が脚本を書いてこの小説を舞台化もしており、歌舞伎座で上演されています。当時の記録によると、舞台上で役者がシュークリームの生地も焼いて作り、特別席の観客にふるまったとあります。
小説「伊豆の踊り子」や「雪国」などで知られる文豪・川端康成は、食が細かったのですが、甘いものが大好きだったそうです。なかでも、大好きだったのがシュークリーム。終戦後から食べるようになり、ゆっくりと味わって楽しんでいたといわれています。
シュークリームが一般に広まったのは、冷蔵庫が普及する昭和30年代以降です。近年は、定番のカスタードクリームのほか、生クリーム、チョコレートや抹茶クリーム、さらにはシュー生地の上にクッキー生地を乗せて焼いたクッキーシュー、パイ生地を合わせたパイシューなどさまざまなバリエーションを楽しむことができますよね。
2017年、株式会社モンテールがおこなった調査によると、「購入する回数がもっとも多いスイーツは?」という質問のランキングは1位がシュークリームで、2位がプリンでした。「シュークリーム」と答えた人を性別・世代別でみると、20歳代の男性で49.2%。2位は40歳代男性で45.8%、3位は30歳代男性で38.5%、4位は20代女性で36.4%でした。
さらに20代男性で、シュークリームを月に1回以上食べている人は68.3%、ほぼ毎日食べている人はなんと6.7%もいるそうです。
毎日食べているという人も、ちょっと幸せな気持ちになりたいときに食べるという人も、毎月19日の「シュークリームの日」は、おいしいシュークリームを味わってみてはいかがでしょうか。買ってきたシュークリームにチョコレートソースをかけたり、バナナやミカンなどのフルーツやアイスクリームを添えたりと自分好みにアレンジしてみてもいいですね。