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島先生の発酵よもやま話 第11回 お茶は発酵飲料?

島 純

龍谷大学農学部生命科学科教授、博士(農学)

島先生の発酵よもやま話 第11回 お茶は発酵飲料?

島 純

龍谷大学農学部生命科学科教授、博士(農学)

滋賀はお茶の産地

滋賀県には、多くのお茶の産地があります。政所茶、土山茶、朝宮茶は、近江三大茶とよばれることがあります。その中でも、政所茶は伝統的な製造法でお茶の製造を行っており、「宇治は茶所、茶は政所…」と茶摘み唄にもうたわれるほどの銘茶です。最近では生産量が減ってきていて、幻の銘茶とされています。

お茶と微生物

お茶にはいろいろな加工法があります。伝統的に、緑茶は「無発酵茶」、烏龍茶は「半発酵茶」、紅茶は「発酵茶」と分類されています。
ただし、ここで使われている発酵という言葉は、厳密には発酵をさしていません。発酵食品とは微生物の作用によりつくられる食品でしたね。烏龍茶や紅茶は、もともとお茶の葉中に含まれていた酵素という成分のはたらきによりつくられるので、微生物の力が加えられている訳ではないのです。
そうしますと、お茶は発酵食品ではないという結論になってしまいます。ところが、日本や中国には、微生物の力によって加工されるお茶が存在しています。このような微生物の発酵によるお茶のことを「微生物発酵茶」とか、「後発酵茶」と呼びます。
日本では、碁石茶(高知県)や阿波晩茶(徳島県)が微生物発酵茶として有名です。
このような微生物発酵茶の製造には乳酸菌やカビが関わっていて、独特の風味がお茶に加わります。中国のプーアール茶も微生物発酵茶です。したがって、お茶には発酵飲料と呼べるものと、呼べないものが含まれるのです。

意外な発酵飲料

世界に目を向けてみると、意外な飲料が発酵飲料であることがわかります。それはコーヒーです。コーヒーチェリーとよばれるコーヒーの実から果肉などを取り除いても、コーヒー豆にくっついているネバネバしたものが残ります。水中で発酵させると、このネバネバを取り除くことができるのです。最近では、単にネバネバを取り除くだけではなく、発酵のプロセスでよりよい風味をつけようとの試みが盛んになってきています。
この連載では、さまざまな発酵食品について述べてきました。発酵食品のもつ魅力を理解する一助になれば幸いと考えています。

出典:「島純の発酵食」『滋賀民報』