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便秘を予防して、快適な日常生活を

中村 富予

龍谷大学農学部教授

便秘を予防して、快適な日常生活を

中村 富予

龍谷大学農学部教授

便秘が引き起こす問題

日本人にとってなじみの深い便秘は、女性、高齢者に多く、日本人の約10人に1人が便秘に悩んでいると言われています1)。
慢性便秘症になると、学生ならば授業に、社会人ならば仕事に集中できない、よく眠れないなどQOL(生活の質)に影響を及ぼすだけでなく、心疾患、脳卒中などのリスクが高まるといわれてます。また、慢性便秘症の患者さんの多くは、うつや不安などの心理的異常を示すスコアが高いといわれています2)。そのために、便秘を予防することは、心身ともに健康な状態を保つために大切です。

現在の便秘を予防するための食事指導

排便は、胃に一定量以上の食べ物が入ると腸の運動スイッチが入る反応(胃・結腸反射反応)によって引き起こされます。この反応は朝に強く起こるので、便秘予防解消のための食事指導では、朝食をとること、その後トイレに行くこと、規則正しく3食食べること、食物繊維や水分をしっかりとることが推奨されています。しかし、食物繊維や水分摂取量の増加が慢性便秘症を解消するかどうかについては現状では十分なエビデンスがないとされています1)。

私が考える便秘予防方法

©健康情報誌「こまど」2020年9月号 p23からの転載

私の研究室では、大学生の生活習慣、食事・栄養素摂取量が排便状況と関連するかを調べています。約700人のデータでは、総エネルギー摂取量、とくに朝食のエネルギー摂取量、1日の炭水化物、たんぱく質の摂取量、とくにご飯の摂取量が多いほど、排便回数が多いという結果でした3)。これは、炭水化物、たんぱく質を消化するために、胃のぜん動運動(消化管が収縮し、食べたものを肛門に向かって送る運動)が活発化し、胃・結腸反射反応が起きたためだと考えられます3)。

私が考える便秘予防方法は『炭水化物、たんぱく質が適量含まれた食事をしっかりとること』です。胃のぜん動運動を活発にするものを毎食一定量とる、すなわち毎食規則正しくしっかり食事をとり、胃・結腸反射反応を活発にすることが、便秘予防につながります。今後も、このことをさらに検証し、人々のQOLの向上や心疾患や脳卒中の予防に貢献したい考えています。

1) 日本消化管学会 (編)「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症-」

2) Ruszkowski J, Heleniak Z, Król E, et al. Constipation and the quality of life in conservatively treated chronic kidney disease patients: across‑sectional study. Int J Med Sci 2020; 17: 2954‑2963.

3)大正製薬HP「便秘の仕組み」https://brand.taisho.co.jp/colac/benpi/beni/