2026年3月、龍谷大学 農学研究科の大学院生たちが育てたラッカセイを加工した竹炭豆「ピーナッツの時間」が誕生しました。
「ピーナッツの時間」が生まれたきっかけは、龍谷大学の「持続的食農環境」高度専門人材育成プログラムの授業「グリーンチャレンジ演習」です。演習では、大学院生たちがラッカセイを栽培。収穫したラッカセイを老舗食品メーカーが加工し、「ピーナッツの時間」として商品化されました。
今回は、龍谷大学 農学部教授で、長年マメ科植物の研究を続けてきた大門 弘幸先生と龍谷大学大学院 農学研究科の浅井 彩花さん、鈴木 空冬さん、幸池 健志さんの3名に「ピーナッツの時間」の開発ストーリーについてお話を聞きしました。
龍谷大学農学部 大門 弘幸 教授
大門 先生
「現在、自治体や企業では、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、温室効果ガス削減の取り組みが進められています。また、龍谷大学 でも2022年にカーボンニュートラル宣言を発出しました。農学研究科では、食と農のあるべき姿を見据えた“グリーン人材”の育成を目的に、2025年から「持続的食農環境」高度専門人材育成プログラムを実施しています。
収穫物を商品化した背景には、地域の農家さんや流通関係者のみなさんに、『環境にやさしい農業という付加価値をつけることで、六次産業化の可能性を感じてほしい』という想いがありました」
2025年度は、農学研究科に在籍する大学院生のほぼ全員にあたる約30名が同プログラムを受講。修了した学生には、修了証としてオープンバッジが授与されました。
ラッカセイは、環境に配慮した循環型農業の考え方を実践しながら育てられました。栽培場所となったのは、京都府木津川市の農家・静川さんのビニールハウスです。4月中旬に種をまき、6月に苗を定植。10月中旬に収穫を迎えました。
収穫したラッカセイは、龍谷大学 瀬田キャンパスへ運ばれ、学生たちが乾燥作業や、さや割機を使った殻むき、選別作業などを行いました。
また圃場では、土壌のpHやEC(電気伝導度)を計測。栽培期間中はデータロガーを用いて、気温を1時間ごとに測定し、約4カ月間にわたる積算温度を記録しました。
幸池 健志さん(龍谷大学大学院 農学研究科)。農学部生命科学科出身で、専門は小麦の花粉形成機能についての遺伝子解析
幸池さん
「昨夏は気温が順調に上がったため、理論値と実測データとの間に大きなズレはなかったかと思います。演習では、静川さんの畑だけでなく、滋賀県守山市のトマト農家さんや、食品残渣を活用して堆肥を製造する工場も訪問しました。さらに田んぼから温室効果ガスを採取している滋賀県農業技術振興センターにも伺いました」
浅井 彩花さん(龍谷大学大学院 農学研究科)。農学部食品栄養学科出身で、研究テーマは医療現場での生成AI活用
浅井さん
「私は食品栄養学科の出身なので、講義では農業に関する専門用語を思い出したり、理解したりするところからのスタートでした。農場や試験場を訪れるのも、学部時代の食の循環実習以来だったため、時には実習の内容に付いて行くことに精一杯になることもありましたが、普段から農場に出ている他の受講生たちに助けてもらい、作業を進めることができました。この演習で、自分の専門とは異なる分野を座学から実習まで一貫して学ぶことができました。農学研究科の一員として、また新たな気づきやおもしろさをたくさん発見でき、楽しかったです」
収穫後の選別作業
鈴木 空冬さん(龍谷大学大学院 農学研究科)。農学部生命科学科出身で、専門は昔の小麦品種の遺伝子解析
鈴木さん
「ラッカセイの収穫量は、目標としていた50キロには届かず、最終的には45キロとなりました。特に難しかったのは、収穫後の選別作業です。
充実した粒(上実)と、それ以外の粒を手作業で選別していったのですが、『どの大きさなら上実とするか』という判断基準に個人差がありました。ラッカセイは粒が大きいほど美味しい一方で、大粒だけを選ぶと商品化できる量が減ってしまいます。そのため、学生同士で相談を重ねながら、選別基準を決めていきました」
選別後のラッカセイは、福山市 にあるメーカーへ送られました。竹炭パウダーと小麦粉、醤油を混ぜ合わせたペーストで豆をコーティングし、「ピーナッツの時間」が完成しました。
これまで農学部では、実習で栽培したラッカセイを使い、キャラメリゼやボンボンショコラなどを開発してきました。今回商品化された「ピーナッツの時間」は、竹炭ならではの真っ黒な見た目が特徴です。
大粒のピーナッツをかじると、醤油と竹炭の香ばしさが口いっぱいに広がり、その後から豆本来の滋味深い味わいがじんわりと追いかけてきます。
大門 先生
「抹茶やきな粉も候補に挙がっていましたが、見た目のインパクトの大きさから竹炭を選びました。炭は炭素ですから、『低炭素社会を実現するために炭素を食べよう』というメッセージも込めています」
学生たちからも、「豆の旨みが1粒にぎゅっと凝縮されていました」「ポリポリとした食感が心地よく、1日で完食してしまいました」といった声が上がるなど、高い評価を集めていました。
今回の演習で栽培されたラッカセイは、「おおまさりネオ」という品種です。一般的なラッカセイと比べて粒の大きさが約1.5〜2倍あり、しっかりとした甘みを持つことも特徴です。
大門 弘幸 先生が「おおまさりネオ」を選んだ理由は、その味わいだけではありません。“持続可能な農業”を実践的に学べる点にも注目しました。
大門先生
「おおまさりネオは、豆を収穫した後も茎や葉が緑色のまま残ります。茎や葉には窒素やリンが多く含まれており、それらを畑にすき込むことで、土壌から回収した養分を翌年以降に再利用できます。
こうした残渣(ざんさ)のリサイクルは、農地への化学肥料の使用量削減とそれによる温室効果ガスの削減にもつながります。学生たちには、こうした循環型農業の考え方を実地で学んでもらいました」
商品名「ピーナッツの時間」には、「おいしく味わいながら、低炭素社会の未来について考える時間になってほしい」という想いが込められています。
お茶やコーヒー、お酒とともに楽しみながら、サステナブルな食と農の未来に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
ピーナッツの時間
販売:龍谷メルシー株式会社
オンラインショップ
https://store.shopping.yahoo.co.jp/ryukokumerci-online/rm-n004.html