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学生×地域の協働で生まれた「もち米パックご飯」。滋賀・高島の棚田で挑む農村振興プロジェクト

Moglab編集部

Moglab編集部 取材スタッフ

学生×地域の協働で生まれた「もち米パックご飯」。滋賀・高島の棚田で挑む農村振興プロジェクト

Moglab編集部

Moglab編集部 取材スタッフ

滋賀県高島市マキノ町・森西集落の棚田で育てたもち米を、レトルトパックご飯として商品化。このユニークな取り組みに挑戦したのは、龍谷大学経済学部・西川芳昭ゼミの学生たちです。

学生たちは田植えや草取り、稲刈りといった農作業だけでなく、商品の企画や試作、パッケージデザイン、販売までを一貫して担当。地域と関わりながら学びを深める「もち米プロジェクト」に取り組んできました。

棚田での米づくりから商品化まで、学生たちはどのような思いで活動してきたのか。西川ゼミのメンバーに話を聞きました。

キーワードは「“食べる人”と“作る人”をつなぐ」

西川ゼミのテーマは「持続可能な食と農の関係」。「食べる人と作る人をつなぐ」をキーワードに、農作業を体験するだけでなく、商品開発や販売も学生が主体的に担うプロジェクトです。

森西集落との縁が生まれたのは、2022年に滋賀県高島市で行われた「全国棚田(千枚田)サミット」です。このサミットをきっかけに、龍谷大学の社会学部・農学部・経済学部の3学部が高島市と連携することになりました。

高島市には3ヶ所の棚田があります。西川先生が選んだのは「一番、素朴なところ」。

西川先生が重視したのは、景観の美しさだけではなく、地域の人々によって日常的に活用されている棚田であることでした。こうして森西集落との交流が始まり、西川ゼミでは2023年から本格的な米栽培に取り組んでいます。

人口68人の小さな集落で、もち米を育てる

森西集落が位置するのは、琵琶湖西岸、滋賀県高島市マキノ町。有名な「メタセコイア並木」へと続く玄関口にある、人口約70人の小さな集落です。

地元出身農家の水口(みなくち)淳さんが経営する農業法人「みなくちファーム」が管理する田んぼで地域の方たちの指導をうけながら、学生たちは農薬や除草剤を使わない有機栽培でもち米を育てました。

品種は、滋賀県を代表するもち米「羽二重餅(はぶたえもち)」です。

田んぼの広さは700平方メートル。25mプール2つ分くらいの広さ。

2025年度のプロジェクトは、4月の事前学習からスタートしました。5月に田植えを行い、6〜7月には学生たちがグループに分かれて棚田へ通い、草取り作業に取り組みました。10月4日には稲刈りを実施し、収穫後は刈り取った稲を天日干しにする「はざ掛け」も体験しています。

活動拠点となったのは、集落の集会所「草の根ハウス」です。学生たちは作業の合間に、集落内のカフェ「ミネモリサンチ」のランチを囲みながら地域の方々と交流を深めました。

さらに2月には、地区に近いペンションで1泊2日の交流合宿を実施。森西区の区長でもあるペンションのオーナーも交えてバーベキューを楽しみながら活動を振り返り、次年度の計画について意見を交わしました。もち米づくりは単なる農作業ではなく、人と人とのつながりを育む学びの場にもなっています。

3年生ゼミ長の綾田 なつみさん(経済学部3年生)

「西川ゼミは3年生が11人、4年生が13人で合計24人。全員がプロジェクトに関わっています。関係者への挨拶まわりや販売への営業活動など、農作業以外のことも自分たちで進めました。それぞれが情報を共有できているか、スケジュール通りに動けているかを常に確認していました。人数が多い分、全体を把握することが一番大変でした」。

もっちり美味しい「レトルトパックご飯」

収穫できたもち米の活用方法として西川先生が提案したのが、レトルトパックご飯の商品化でした。

学生たちは、京都府木津川市でパックご飯の製造を手がける企業「TMフードラボ」に自ら連絡を取り、工場見学や試作を行いながら商品化に挑戦。

2025年度は60kgのもち米を利用して計800パックを製造し、そのうち600パックを販売用として展開。残る200パックは、プロジェクトに協力した関係者などへ配布されました。

もち米パックご飯は、容器のまま電子レンジで温めるだけ。さらに、水を加えてスプーンでよく混ぜるとお餅のような状態にもなります。おはぎ風やお餅風など、アレンジも楽しめる商品です。

ゼミ生たちからは「レトルトにすると品質が落ちるかなと思っていましたが、炊き立ての美味しさそのままで驚きました」「もち米の甘みがしっかり感じられました」「もちっとした食感とゴマ塩との相性が抜群でした」と、大満足の声が上がりました。

3年副ゼミ長の米納 菜月さん(経済学部3年生)

「私はパッケージデザインを担当しました。卒業式での販売を最初の目標にしていたので、お祝いの気持ちを込めてテーマカラーを赤色にしました。また、田植えの写真を入れることで、森西集落の雰囲気と学生が栽培したことが伝わるようにデザインしました。

プロジェクトを通して学んだことは、コミュニケーションの大切さです。田植え前には、水口さんが主催するマルシェで2泊3日のボランティアも経験。朝5時に起きて来場者・出店者の車両整理や運営を手伝い、地域の方達と関わったことで、農作業もスムーズに進めることができました」。

マルシェなど学外でも販売

京都・東本願寺前マルシェの様子

3月の卒業式での販売を皮切りに、深草キャンパスにある生協店舗、滋賀県高島市の農業公園「マキノピックランド」、京都市南区のコワーケーションスペース「九条湯」など、学外での販売にも積極的に取り組みました。

鈴木 冴月さん(経済学部4年生)

「農作業は全力で楽しもうと思って参加したのですが、やはり苦労もありました。販売の場では学生の私たちが頑張って育てた、工夫したということを伝えたいけれど、消費者の心に刺さる情報ではないこともある。販売では、そのズレをどう埋めるかを意識しました」。

東 愛子さん(経済学部4年生)

「チラシを2パターン作成。高島市内で配布するチラシは、ゼミの活動内容や私たちの想いなど、情報を多めに記載。マルシェなどで一般の方に向けたチラシは情報量を絞り、学生が活動している写真を大きく入れ、一目でわかりやすい内容にしました」。

2026年5月、滋賀県高島市「マキノピックランド」では準備した54個が完売

藤村 春樹さん(経済学部3年生)

「私は営業と在庫管理を担当しました。もち米パックご飯は、1個500円。学内の生協でも販売しているのですが、学生にとっては価格がやや高め。生協では私たちの活動を知ってもらうことを重視し、森西集落のことや商品の特徴をしっかり伝えるように工夫しました」。

4年ゼミ長の三木 蒼依さん(経済学部4年生)

「東本願寺前マルシェでは『学生さんが頑張っているから』『大学生の孫と同じ年代なのよ』と、応援の気持ちで購入される方がいらっしゃったことが意外でした。両親が経営する喫茶店では60個を販売。週に1回、店の手伝いをしているのですが、リピート買いしてくれるお客さまもいらっしゃいました。後日に『お餅にアレンジしてみたよ』と、声を掛けてくださったお客さまのひと言も嬉しかったです」。

2026年度も、もち米プロジェクトを継続中

2025年度の取り組みが評価され、2026年1月に森西集落と龍谷大学の間で「しがのふるさと支え合いプロジェクト協定」が、滋賀県知事・三日月大造氏の立会いのもとで締結されました。協定書には知事の手書きで「ともにがんばりましょう!」の文字が書かれています。学生たちの活動が、行政にも支援される形となりました。

そして、もち米プロジェクトは2026年度もすでに動き出しています。

3年副ゼミ長の土井 秋声さん(経済学部3年生)

「2026年度が本格稼働する前の3月末、副ゼミ長として森西集落を訪問。今年度の日程調整や活動内容の話し合いをしました。4月は、ゼミ生有志で森西集落の春の例祭『神輿渡御(みこしとぎょ)』に参加。例年販売しているフランクフルトに加え、もち米パックご飯も販売しました。5月に田植えが終わったので、6月からは草取りに通っています」。

7月は農学部とのコラボレーションで、滋賀県にある瀬田キャンパスでの販売を予定しています。棚田を守り、地域とともに歩む、学生たちの持続的な取り組みはこれからも続きます。